子どもの野菜嫌いに頭を悩ます親は多い。野菜が登場する絵本の読み聞かせや畑での野菜栽培などを通して、まずは子どもに野菜を身近に感じさせることが、野菜嫌いを克服するポイントのようだ。
東京都の会社員Aさん(36)は、長男(5)の野菜嫌いに困っている。昨冬から、お菓子ばかり間食して、トマトやキュウリ、キャベツなどの生野菜をほとんど食べなくなった。「無理やり食べさせようとしても、苦いから嫌などと言って口を開けようとしません」
食品大手カゴメ(名古屋市)が昨春、幼児・児童を持つ親4800人を対象に行った調査でも、子どもの食生活で困っていることのトップは、「偏食が多い・野菜が嫌い」(41%)。2位の「食べるのが遅い」(11%)以下を引き離した。
野菜嫌いの克服について、NPO法人「みんなの食育」代表理事で管理栄養士の竹森美佐子さんは子どもが野菜嫌いだという家庭は、実は、親も日ごろから野菜を食べていないことが多い。食べても食べなくても、必ず食卓に野菜を並べること。そのうえで、子どもが野菜を身近に感じられるような工夫をすることが大切」と指摘する。 野菜を扱った絵本を活用する方法もある。絵本を紹介する情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんは最近、野菜を好きになるような本を教えてほしいという相談をよく受ける。「絵本に出てきた野菜が食卓にあると、子どもはとても親しみを覚えるようです」と磯崎さん。実際、同サイトには「正義の味方のピーマンが悪者を退治する絵本を5歳の長女に読み聞かせていたら、ピーマンを食べられるようになった」(山口県の母親)などというメールが数多く寄せられているという。
東京都内の会社員Bさん(40)の長女(5)は、母親の料理のレシピ本を見るのが大好きだ。「以前は、キュウリなどの青野菜が苦手でした。でも、料理を作る際に、この野菜を入れるとおいしくなるんだよと言いながら一緒にレシピ本を見ていたら、いつの間にか好き嫌いがなくなりました」
家庭や保育園などで、野菜を育て収穫する体験も貴重だ。静岡県函南町の若葉保育園は、昨年から近くに畑を借りて、キュウリなど十数種類の野菜を園児が育てている。 「水やりや草むしりなどをして野菜を育て、収穫する喜びを知ることで、野菜への愛着が生まれているようです」と園長の山田洋子さん。これまで苦手だったトマトを丸ごと食べられるようになったり、家庭でもナスなどの野菜を食べたいと親に注文したりする園児が増えたという。
食育コーディネーターの大村直己さんが提案するのは、離乳のころから親と一緒に少しずつ野菜を食べることだ。菓子などの甘い味や刺激的な味に慣れてしまうと、野菜の素朴な味が分からなくなってしまう。「料理の手伝いをさせるなど、受け身ではなく、野菜を楽しく食べる経験を子どもに与えてほしい」と大村さんは話している。(読売新聞 07/07/09より)