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少子化対策

『青葉ひかる(社会評論家):女性の生き方や時事問題などについて講演』執筆。56歳。
 政府は今年5月、少子化対策大綱をとりまとめるとのことである。とはいえ、既に保育所への「待機児童ゼロ作戦」や「育児休業法の改正」、企業内保育・駅前保育・コンビニ保育など、多彩な具体策が打ち出されている。
 今日では、「女性が働くことは良いことで必要なことだ」といわれれば反論の余地はない。というより、この言葉はあらゆる議論の前提になってしまっている。「子どものために、せめて3歳くらいまでにそばにいて育児に専念するべきだ」なんて言おうものなら、時代遅れのそしりを免れないような風潮である。
 「子供がいても働きたいという女性がいるから、そのために対策を考えるべきだ」というのが大前提になってしまっているのである。 しかし、子供を育てた一人の女性の見地から、今の「少子化対策」には、その一歩前の議論が欠落していると言わざるを得ない。それは「本当は子供が小さいうちは一緒にすごしたい」というのが女性の自然な思いであるにもかかわらず、こういう母親の気持ちは議論の前提には上っていないということである。というより、無視されているのである。
 一方、若い女性たちが、「本当は子供は欲しいが、持たない。持てない」という場合の最大で、第一の理由に「子育てのコスト」を挙げていることに注目しなければならない。経済的理由がほとんどである。「家で子育てをしていては収入にならない。外に出て働けば、経済的にプラスだ」ということなのである。これが原因で「だから産まない」「だから子供を他人に預けて働く」という結果となる。
 東京都品川区を例に挙げると、保育園で預かる子供1人あたりの国と地方公共団体の負担額(公費)は、公立も私立も一ヶ月約20万円である。ゼロ歳児では、なんと一ヶ月約60万円である。他の地域も全国的にもほぼ同様である。これら人件費と箱物のコストをもっともっと増やそうという施策を、国が一生懸命推進しているのが現状といえる。保育所を利用する家庭のためにだけ、多額の公費が支給されているといっていい。
 結論に移ろう。保育所の幼児だけではなくすべての幼児一人当たりに補助金を「家庭育児手当」(在宅育児手当)として支給するべきである。そうすれば、若い女性も喜んで出産し家庭で育児する機会を得ることができる。すべての子供一人あたりに、同額を補助するという公平さのもとで、親は次のいずれかを選択すればよい。「家庭育児」をするか、あるいは親自身が費用を支払い「保育所任せ」にするかを。すべての親が自由に選択できる公平な制度こそ推進するべきである。
 「産みたいが、経済的に産めない」「子供が小さい間は自分の手で育てたいけれど、預けて働くほうが収入が増えるから働く」という本音の部分が、「子供を持っても働きたい」という表現に変質されてしまっている。もちろん例外があることは否定しない。しかし、「お金を稼ぐために働かざるを得ない」という、多くの女性の本音は議論の対象から外され、「赤ちゃんがいても働くことを女性は望んでいる」という言葉でくくられてしまっている現状がある。
 「家庭で子供を育てたい」という親への経済的支援こそ、緊急の国の「少子化対策」ではないだろうか。子供が幼いうちは親の手で慈しむことが子供にとっても幸せであることは論をまたないだろう。(読売新聞・朝刊より抜粋)