子育て情報

「東京臨海病院・健康増進・介護相談サービス」より抜粋

– 軽度発達障害 –
東京臨海病院小児科医長・勝盛 宏先生
子どもの発達に関して「ことばが遅れている」「落ち着きがない」「親の指示を聞かない」「乱暴である」「友達とうまく遊べない」「かんしゃくが度を越えている」など、どこか少し様子が違うことによって育てにくさを感じたことはありますか?これらの訴えの背景に発達障害が隠れていることがあります。
☆軽度発達障害とは?
軽度発達障害とは、「未来、特定の能力の発達が著しく偏り、健常発達をたどらず、その結果、日常生活面・学校社会面にて何らかの困難を有する状態」を指します。ここでいう障害の意味は、身体障害で使われる障害とはやや異なり、脳機能の発達の「乱れ・ゆがみ」あるいは「アンバランス」と考えてみてください。また軽度とは「知的に遅れがない」という意味です。しかし「知的に遅れがないのに脳の発達が乱れている」と言われても何のことだか分かりにくいかもしれません。実際、軽度発達障害の子どもは一見してもそうと分からないため「障害に見えない障害」とも言えます。その頻度は子どもたち全体の6%とも10%とも指摘されています。軽度発達障害のある子どもをもつご家庭は、前述の訴えについて発達障害の視点がなければ、自分の育て方が悪いと悩んでしまうことが多いのが実情なのです。☆軽度発達障害の診断・分類
軽度発達障害は一般に以下の4つを包括して指します。それぞれの特徴は次のとおりです。1 あまりに落ち着きがない、不注意・衝動的な行動が目立つ・・・行動発達の障害
→注意欠陥多動性障害(AD/HDと言います)
2 友達と上手に関わることが難しい、特定の物事にこだわり過ぎる、変化を非常に嫌がる、応用がき
かない、コミュニケーション・社会性(人との関わり方)・創造力(切り替え・応用力)の障害
→高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群・高機能自閉症を含みます)
3 読み・書きあるいは計算が非常に苦手である・・・特定の認知発達の障害
→学習障害(LDと言います)
4 全般的な軽度の知的発達の障害
→軽度精神遅滞・・・知能指数70~85の境界領域  子どもは発達途上にあるため、これらの診断名は固定したものではなく、年齢とともに問題点が変化して診断名が変わったり、あるいは対応次第では症状が軽快したりすることもしばしばあります。また、2種類以上の特徴を併せ持つこともありますが、より深刻な方を優先して診断名とします。☆軽度発達障害に対する医療機関の役割と対応について
軽度発達障害はいわゆる疾病ではありませんので、完治をめざした医学的な治療法はありません。療育期間(例えば通級学級・特別支援学級など)での治療的な教育、すなわち早期療育が治療といえます。医療機関の役割の要は、療育期間での指導が早期に、かつ、円滑に行えるための側方支援です。具体的には、①障害の診断、②知能検査などによる現状発達評価および課題の指示、③継続的な相談窓口、④問題行動に対しての薬物療法を含む解決のための対応を行います。軽度発達障害自体、概念がなかなか理解されにくいため、ご家族の知識習得に向けた情報提供に力を入れ、その上で療育機関との連携を行います。特に高機能広汎性発達障害の場合には、医療機関だけではカバーしきれないきめ細かいサポートが必要なため、各自治体の発達障害支援センターを中心に療育プログラムを組むことも必要になります。☆軽度発達障害をもつご家族の対応について
ご家族は、子どもの有する問題を単なる強い個性・性格程度と考え、障害ではない→普通の子ども→できないのは本人の努力不足・やる気の問題、と短絡的に解釈してしまうことで、子どもが直面している真の苦労・困難を見過ごしてはいけません。逆に、対応に困って学校・医療機関などに相談しても発達障害とはみなされず、ご家族が非難をあびて追い込まれてしまうのはとても残念なことです。早期発見・早期対応が大切なのは身体疾病と同様であり、幼少時期より集団生活での適応障害をきたさないように、ご家族・教育関係者が発達障害についての知識を習得し、さらに子ども自身のもつ特性・課題に理解を深め、子どもにとって暮らしやすい家庭生活・学校社会生活の環境を提供していくことが大切です。早期に子どもたちの特性に見合った療育支援を行うことができれば、子どもたち自身のもつ能力を十分に伸ばせると思います。東京臨海病院
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